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金沢地方裁判所 昭和53年(行ウ)1号 決定

原告 小沢米蔵 ほか七六名

被告 石川県知事

主文

別紙当事者目録記載の第一原告らは各金二九九七円宛、同第二原告らは各金二二四八円宛の訴提起の手数料を、本決定送達の日から一四日以内に収入印紙をもつて追納せよ。

理由

一  原告らは本件訴訟において、被告石川県知事が参加人北陸電力株式会社に与えた公有水面埋立免許に基づき該工事が施行されると七尾鹿島漁業協同組合又は七尾漁業協同組合の有する共同漁業権を行使する組合員である原告らにおいて、埋立工事自体あるいは漁場消失、埋立工事完成後の発電所からの温排水、右発電所に運搬される原油等の漏出等による漁業被害、右発電所建設による環境被害を受けるとし、右免許が公有水面埋立法四条一項一号ないし三号及び同条三項一号にそれぞれ違反する旨主張してその取消を求めているのであるが、これによると、本件訴訟は財産権上の請求に当るものであり、その訴額算定の基礎となるべき訴をもつて主張する利益は、右漁業(行使)権及び環境利益にほかならないと解される。

二1  漁業権については、七尾鹿島漁業協同組合、七尾漁業協同組合の組合員一人当りの年間平均漁業収入から漁業経費(各漁業協同組合の漁業の態様に応じ、経費率に区別を設けた。)を控除し、各漁業協同組合の漁区面積(従つて原告らがそれぞれ漁業権を行使しうる面積)と、本件埋立工事区域及びその附近海面の面積との比率、漁業権の存続期間を考慮して算定すると、七尾鹿島漁業協同組合所属の組合員たる原告ら(別紙当事者目録記載の第一原告ら。以下第一原告らという。)の漁業純利益は一人当り二五万円、七尾漁業協同組合所属の組合員たる原告ら(同第二原告ら)の漁業純利益は一人当り一〇万円となる。

2  環境被害については、これを経済的に評価、算定するについては原告一人当り金三五万円と認めるのが相当である。

三  そして、本件訴訟は、通常の共同訴訟であり、原告らは各人固有の経済的利益に基づいてその権利侵害の排除を求めているものであつて、原告らの各請求相互間には経済的利益の共通性は認められないから、原告各自の請求の価額を合算して訴額を算定すべきである。

前記のところによると、第一原告ら一人当りの訴額は金六〇万円、第二原告ら一人当りの訴額は金四五万円となるので、原告らは、右各訴額を合算した訴額四一八五万円に対応する手数料二一万二四〇〇円を各自の訴額に応じ負担すべきであり、その金額は、第一原告一人当り三〇四五円、第二原告一人当り二二八四円であるが、すでに納付してある手数料三三五〇円を控除すると、別紙計算書のとおり第一原告らにつき一人当り二九九七円、第二原告らにつき一人当り二二四八円である。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 加藤光康 佐藤久夫 山嵜和信)

当事者目録 <略>

計算書

一 原告総数七七名

二 内第一原告ら(取下原告二名を含む)四八名につき訴額六〇万円、合計二八八〇万円、第二原告ら二九名につき訴額四五万円、合計一三〇五万円、総計四一八五万円

三 右に対する手数料二一万二四〇〇円

四 一人当り手数料

第一原告ら分各三〇四五円、第二原告ら分各二二八四円

五 既納付分総額三三五〇円、このうち一人当り納付とみなす分は第一原告らにつき各四八円、第二原告らにつき各三六円

六 追納額(四と五の差額)

第一原告らにつき各二九九七円、第二原告らにつき各二二四八円

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